なんだこれ。わけ分からない。
ブルーマウンテン、ブレンド、 キリマンジャロ、アメリカーノ、アラビカ、 アメリカン
何がどう違うのか混乱してしまう。そういう人は多いのではないだろうか。
かくいう私も世界で3番目のコーヒー生産国コロンビアに住む前まではそうだった。今はコロンビアに住み、コーヒー農園に訪問し栽培プロセスを見学するほどコーヒーマニアになった。
なのでブルーマウンテン、ブレンド、 キリマンジャロ、アメリカーノがどう違うのかは明確に理解できるようになった。
混乱の原因はコーヒー豆の品種の名前、銘柄の名前、 焙煎度合いによる名前がごっちゃになっているからだ。
以下4つの項目を知ればもう名前の違いに戸惑うことはなくなるだろう。
➀コーヒー豆の品種の違い
コーヒー豆には大きく分けて3つ品種がある。
・アラビカ
・カネフォラ
・リベリカ
②銘柄の違い
コーヒー選びで絶対に知っておきたいのがコーヒーの銘柄。
コーヒー豆の銘柄にはそのコーヒー豆が採れた国、地域、山、港、現地民族の名前が付けられている。たとえば有名な銘柄のキリマンジャロはアフリカ大陸最高峰の山キリマンジャロのふもとで採れるコーヒーだ。ハワイ・コナはハワイ島の西側のコナ地区で採れるコーヒーだ。
③ 焙煎度の違い
コーヒー豆は焙煎時間の長さによって同じ豆でも酸味や苦みが異なってくる。焙煎度は焙煎時間の短い「浅煎り」、程よい時間焙煎した「中煎り」、時間をかけて焙煎した「深煎り」の3つに分かれる。
④アメリカンコーヒー、アメリカーノ、ブレンド
ざっくりいうとこれらはコーヒー豆の種類ではなく飲み方や淹れ方、豆の調合を表す名称。喫茶店でも良く見かけるものなので知っておきたい。
➀コーヒー豆の品種の違い
コーヒー豆は元はコーヒーノキという植物から採れる実 ”コーヒーチェリー”の種である。 コーヒーチェリーそのものはフルーツの様でかじると甘い。
コーヒーノキはアカネ科コーヒーノキ属に属する植物で世界に120種以上存在する。その中で飲用に収穫されるのがアラビカ種、カネフォラ(ロブスタ)種、リベリカ種の3つ。
アラビカ種
原産地: アフリカ エチオピア
栽培エリア:世界中
世界で栽培されているコーヒーの60~70%がこのアラビカ種だ。私たちが飲むコーヒーのほとんどはアラビカ種のコーヒー。もしくはアラビカ種メインのコーヒーに後述するカネフォラを少しブレンドしたコーヒーを私たちは飲んでいる。
標高1000~2000mの熱帯高地で栽培されブルーマウンテン、キリマンジャロ 、モカなど有名な銘柄はすべてこのアラビカ種に属する。
アラビカ種は酸味が強めでフルーティーな風味。ストレートで飲むこともでき味に優れている。しかし霜や病気に弱い欠点がある。かつてスリランカ・セイロン、インドでもアラビカ種のコーヒー農園が大規模に運営されていた。しかし、1860年代にコーヒー葉の病気「さび病」が蔓延して農園は壊滅しお茶の栽培に移行。皮肉だがだからこそスリランカには世界に名高いセイロンティーが生まれた。
カネフォラ(ロブスタ)種
原産地: アフリカ コンゴ
栽培エリア:ブラジル、ベトナム、インドネシア、インド、西アフリカ
カネフォラ種またの名をロブスタ種は「さび病」のような病気に強く 標高300~800mの低地でも栽培できるので1900年ごろから普及し始めた。
カネフォラ種は酸味が少なく焦げた麦茶のような独特の香りがある。エグみ、苦味が強くカネフォラ種のみをストレートで飲むことはできない。
アラビカ種と混ぜて(ブレンド)しインスタントコーヒーやアイスコーヒーなど安価なコーヒーの原料に使用される傾向がある。
リベリカ種
原産地: アフリカ リベリア
栽培エリア: 西アフリカ、フィリピン、マレーシア
カネフォラ種ほどエグみ、苦味は強くないものの香味はアラビカ種に劣る。 果実の成熟が遅く収穫するまでに時間がかかる。また大木なために収穫が大変なこともあってあまり普及していない。 生産量は全体の1~5%程度とされる。輸出用ではなく生産国現地で消費されている。
②銘柄の違い
コーヒーの銘柄には国、地域、土地の名前がついている。
国 …コロンビア、ベトナム、ブラジル、グアテマラ
地域…ハワイ・コナ、トラジャ
山 …ブルーマウンテン、キリマンジャロ
港 …モカ
現地民族… マンデリン
自分の好みのコーヒーの味を知る上で銘柄を知っておくのはマスト。
ただ気を付けたいのが同じ銘柄のコーヒーだからと言ってすべて同じ味かと言うとそうではない点だ。採れた農園や収穫年、保存状態で格付けや等級は大きく異なってくる。あくまでも銘柄は味の好みの全体を掴むためのものだ。
上の図を見てもらうと分かるだろうが、有名なコーヒーの銘柄の産地はすべて赤道直下の南北回帰線に位置している。このエリアは「コーヒーベルト」 と呼ばれており コーヒーの生育条件を満たしている。
<コーヒーの生育条件4つ>
➀雨季と乾季がありコーヒーの成長期に雨が多く収獲期に乾燥している
②日差しが強すぎないこと。日陰を作る背の高い木(シェイドツリー)を必要とする。
③年平均20℃
④水はけが良く少し酸性の土壌
◎ポイント◎ 標高が高いと美味しいコーヒーができやすい
コーヒー農園は灼熱なイメージがあるかもしれないがコーヒー農園は高地にあるので日陰にいると意外と涼しい。美味しいコーヒーの生育には標高の高さがカギとなる。
標高の高い高地は気温が低く日中と夜間の気温差が大きい。この気温差のストレスがコーヒーの実の糖分の生成を促す。この糖分がコーヒーの美味しさ、香味成分となる。
標高が高いと美味しいコーヒーができやすいのだ。
ブラジル
ブラジルは世界一のコーヒー生産量を誇る。 ブラジルでは広大で平らなコーヒー農園で機械で収穫作業を行う。品種改良への投資に熱心なため品質が高いえうに安い価格競争力のあるコーヒー豆を生産できている。
コーヒー豆はサンパウロ州の 世界最大のコーヒー輸出港サントス港に集まり、輸出される。サントス港から出荷されたコーヒーは”ブラジルサントス”とも呼ばれる。
そんなブラジルのコーヒー豆は日本で最も飲まれている。 酸味と苦味の調和がとれておりクセがなく親しみのある味といえる。 味はチョコレートのような香りと苦味があると喩えられる。クセがなく安価なためブラジルのコーヒー豆はブレンドによく用いられる。
ベトナム
驚きなのがベトナムのコーヒー豆生産量はブラジルに次ぐ2位。そのベトナムで生産されているコーヒー豆の大半は「ロブスタ種」だ。
前述したとおり、ロブスタ種は非常に苦くてストレートでは飲めない。
そのためベトナムでは焙煎後にはコーヒー豆をバターや魚醤で炒る独特の処理がなされる。コーヒーを淹れる際にはコンデンスミルク(練乳)を加える。コンデンスミルクとバターの風味が混ざって美味しく飲める。
コロンビア
コロンビアはブラジル、ベトナムに次ぐコーヒー生産量を誇る。 コロンビアの国土にはアンデス山脈が南北に縦断しており標高の高い丘陵地帯にコーヒー農園がある。以下の写真のようにブラジルと異なり農園は斜面にあるので機械が使えず手作業で1つ1つコーヒーの実を摘んでいる。
手作業のおかげでコーヒーのエグみの元凶となる欠点豆(未成熟、熟しすぎ、病気の豆)の混入率が低い。また、コーヒー農園の標高の高さは美味しいコーヒーができる条件を満たしておりコロンビアのコーヒーは非常に人気が高い。
コロンビアのコーヒー農園で働いている人から話を聞くとコロンビアはコーヒー農家への支援が非常に手厚いとのことだ。カフェ農家同士で設立したNGO組織 「コロンビア国立コーヒー生産者連合会」は非常に熱心に活動しおりコーヒー農家への支援を行っている。
なお日本で有名なエメラルドマウンテンはアンデス山脈のふもとのコーヒー農園で採れるコロンビアコーヒーをさらに厳選した高級豆だ。コロンビアコーヒーの中で3%未満と言われている。
コロンビアで生産されるコロンビアコーヒーはナッツを感じさせる 後味に残るふんわりとした甘さが特徴だ。 酸味と甘味のバランスが良くザ・コーヒーといったコーヒーの王道だろう。
またコロンビアコーヒーはクルミやピーカンナッツなどナッツ類のお菓子と相性が良い。
グアテマラ
グアテマラは国土の約70%が火山に囲まれた山岳地帯だ。標高が高く昼夜の寒暖差が激しく、火山灰の土壌で水はけがよく酸性。コーヒー栽培に適した条件が揃っている。
グアテマラのコーヒーは果実のように酸味が少しあり甘いフルーティな香味がするのが特徴だ。
缶コーヒーの「レインボーマウンテン」にはグアテマラ産のコーヒー豆が使用されている。グアテマラ全国コーヒー協会・通称ANACAFE(アナカフェ)が認定した高級豆のみが使用されている。
ブルーマウンテン
缶コーヒーでも良く見かけるブルーマウンテン。 ハワイコナ、キリマンジャロと並んで「世界三大コーヒー」の1つに数えられる。 カリブ海の島国ジャマイカの山ブルーマウンテンで栽培されているコーヒーだ。
ブルーマウンテンは香味が良く、調和の取れた味わい。口当りが良く滑らかにごくごく飲める喉越しが特徴。 コーヒー豆の中でも高値がつけられており品質の高さで有名。
ハワイ・コナ
ハワイ・コナはハワイ島のコナ地区で栽培されるコーヒー豆だ。 ブルーマウンテン、キリマンジャロと並んで「世界三大コーヒー」の1つ。
ハワイ・コナは年間の生産量はわずか1,000~1,500トンでコーヒー生産量のたった1%を占めるのみ。希少価値が高い。
ハワイ・コナは強い酸味とコク・風味がある。あの米国大統領府ホワイトハウスもご用達のコーヒーとのことだ。
キリマンジャロ
キリマンジャロはアフリカのタンザニア北東部のアフリカ大陸最高峰のキリマンジャロ(標高5895m)のふもとで栽培されている。
ブルーマウンテン、ハワイ・コナと並んで「世界三大コーヒー」 に数えられる。 生産量は多くなく世界全体のコーヒーのわずか1%。高品質なコーヒー豆としてコーヒー愛好家に親しまれている。
強い酸味とこくがあり”野性味あふれる”パンチの利いたテイストが特徴。
モカ
モカは中東イエメンの港町モカに由来する最も古いコーヒー銘柄だ。
コーヒーノキが初めて発見されたのはエチオピアだ。6~9世紀頃にアラビアに伝播しコーヒーは栽培されるようになったとされる。アラビカ種という名前もアラビアが由来とも言われている。
当時、エチオピアのコーヒーはイエメンの港町モカに集められアラビカ商人によって世界中に輸出された。そしてモカから輸出されたコーヒーはモカとして人々に親しまれていたのだ。
モカは苦味より酸味が強く独特の酸味があるのが特徴。
マンデリン
マンデリンはスマトラ島産。
17世紀末のインドネシアはオランダの統治下でコーヒー栽培を行っていた。特にアラビカ種が多く栽培されていた。が20世紀に入って 「さび病」の流行でコーヒーノキのほとんどが壊滅。その中でわずかに生き残ったアラビカ種をもとにスマトラ島のマンデリン族が栽培したのがマンデリンコーヒー。
マンデリンは酸味が少なく苦味成分が強めでコクのある味が特徴である。
トラジャ
トラジャはインドネシアのスラウェシ島産。トラジャ地方が名前の由来。
トラジャは生産量が少なく高級なコーヒーとして珍重されている。大規模な農園ではなく山岳地帯に住む農民が各自の小さな農園で無農薬(肥料はニワトリなどの家畜の糞)でコーヒーノキを栽培している。
クリームのようななめらかさとともに力強いコクがあるのが特徴。
追記)ゲイシャ
日本の芸者ではなくエチオピアのGeisha丘が由来。
ゲイシャが一躍有名となったのは2004年のこと。 年に1度パナマで開催される「ベスト・オブ・パナマ」という国際品評会にパナマの『エスメラルダ農園』がゲイシャコーヒーを出品した。
ゲイシャコーヒーを飲んだ世界各国の審査員たちはその美味しさに驚愕。 品評会後のオークションでゲイシャは史上最高の買値で落札されることとなった。
今では世界で最も高価なコーヒーの一つとされる。
爽やかな酸味とフルーティな香りが特徴だ。ゲイシャは高値で取引されるため世界中で栽培する農園が増えている。しかしゲイシャは多雨を好み風に弱いため栽培が難しい。適した生育環境でないとゲイシャとしての特徴ある香り、味のコーヒーは育たない。
③焙煎度の違い (8段階)
生豆の状態ではコーヒーは味も香りもしない。生豆に熱を加える焙煎を経て私たちの知るコーヒーの味や匂いとなる。
焙煎時間が短い浅煎りの段階は酸味が強め。焙煎が進むと酸味が弱まっていき苦味が強まってくる。
焙煎の度合いは大きく分けると浅煎り、中煎り、深煎りの3段階である。さらに細かく分けると8段階ある。飲み方や豆によって最適な焙煎の度合いは変わってくる。コーヒーを飲むうえで知っておいて決して損はないだろう。
浅煎り
浅煎りのコーヒー豆は黄色がかかった褐色。酸味が強く苦味が弱いのが特徴。コーヒー特有の味・香りはほとんどない状態。
➀Light(ライト)
最も浅煎り。酸味が強く、苦味がない。香りもほとんどなく Lightで淹れるコーヒーは飲むのには適していない。
②Cinnamon(シナモン)
色がシナモンに似ていることからシナモンと呼ばれる。酸味が強く苦み、コクがない。試飲テスト用に使用されることが多い。
中煎り
中煎りでコーヒー豆の味や香りなどの個性がでる。そのため香り、コクが自分好みなのかどうか確認するのにちょうどよい。
③Medium(ミディアム)
栗に近い色。酸味が強くストレートコーヒーに最適。タンザニア、エチオピアのカリブ海のコーヒー豆はこのミディアムにするのに適している。
④High(ハイ)
少し濃い茶色。 酸味が少し残るものの豆の香り、味といった個性が発揮される。日本では一般的な焙煎度合い。グアテマラなど中南米のコーヒー豆はこのハイが適している。
⑤City(シティ)※最もオススメ
濃い茶色。酸味が消えて苦味も少なめのローストで最も推奨される焙煎度合い。
深煎り
この焙煎段階の豆は非常に黒く、表面に脂が浮き出てくる。苦味が増して酸味は弱くなる。エスプレッソやアイスコーヒーに使用される。
⑥Fullcity(フルシティ)
エスプレッソやアイスコーヒーに適している。ブラジル、コロンビアのコーヒー豆にもこの焙煎度合いが適している。
⑦French(フレンチ)
苦味が強くカフェラテなどに適している。ブラジル、マンデリン、ベトナムのコーヒー豆に最適。
⑧イタリアン
最も深い焙煎段階。苦味、こおばしい香り。脂が浮き出きって豆が着火する場合もある。
④アメリカンコーヒー?アメリカーノ?ブレンドって何?
喫茶店にはアメリカンコーヒーやアメリカーノとメニュー表に乗っている。また缶コーヒーにはブレンドと書かれている。 一体それぞれ何が違うのか。
アメリカン
喫茶店のメニュー表に必ずあるのが「アメリカンコーヒー」。
浅煎りのコーヒー豆(焙煎具合はシナモンローストからミディアムロースト )と多めのお湯で薄く淹れるのが特徴。 浅煎りなので酸味がありさっぱりした味となっている。苦味はほとんどない。
アメリカンコーヒーが生まれた背景は第二次世界大戦にまで遡る。戦争では覚醒、興奮作用のあるコーヒーが重宝された。そのためコーヒーの多くが軍に徴用され民間に出回るコーヒーが限られ少ない豆で多くコーヒーを淹れる工夫が求められた。その時の習慣で薄く淹れる習慣が根付いたのだ。
アメリカーノ
アメリカンコーヒーとアメリカーノは混同されがちだがそれぞれ違う。
アメリカーノは「エスプレッソをお湯で薄めたコーヒー」である。エスプレッソを抽出してから、それをお湯で割ったコーヒーなのだ。
アメリカンコーヒーと異なりアメリカーノはエスプレッソで使用しているコーヒー豆の焙煎度合いによって味が変わる。深煎りなら苦味が出て浅煎りなら酸味が出る。
ブレンド
色んな産地のコーヒー豆を混ぜた(ブレンド「blend」した)コーヒーをブレンドコーヒーと言う。
ブレンドコーヒーに対してキリマンジャロ、ブルーマウンテンなど単一産地のコーヒーを「ストレートコーヒー」と言う。
それでは「ブルーマウンテン・ブレンド」と呼ばれるコーヒーは何なのか。日本では公正取引委員会がブレンド名に産地を使う際にはその産地のコーヒー豆を30%以上使用するように定めている。
つまりブルーマウンテンを30%以上混ぜているため 「ブルーマウンテン・ブレンド」 と名乗れるわけだ。他の産地も同様だ。「キリマンジャロ・ブレンド」「ハワイコナ・ブレンド」etc…
ブレンドすることによって他のコーヒー豆にはないユニークな味わいを実現できる。しかしながら安いロブスタ種のコーヒー豆を混ぜるなどして価格調整のためにブレンドがなされるケースもある。
さあコーヒー生活を楽しもう!
本記事で紹介した4つの項目を知ればもうコーヒーで戸惑うことはなくなるだろう。
コーヒー豆は種類によって酸味、苦味、甘み、こくが大きく変わってくる。自分の好みのコーヒー豆を知る上でも絶対に抑えておきたい知識なので丸暗記してしまおう。
さあ知識を武器にコーヒー生活を楽しもう。
コーヒーを趣味にする意義については以下の記事で詳しく解説している。ぜひ読んでみて欲しい。