【スゴ本書評】『最新プラットフォーム戦略 マッチメイカー』今鬼ほど儲かるビジネスの原理

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Facebook、Google、YouTubeなどプラットフォーム全盛の時代だ。しかしこのプラットフォームって一体何なのか。

プラットフォームという言葉が溢れている中でプラットフォームがイマイチ良く分からない人も多いはずだ。そんなプラットフォームを明快に理解できるのが本書「最新プラットフォーム戦略 マッチメイカーだ。私はプラットフォーム関連の書籍を多数読んできたが本書がベストだと断言できる。

そう言えるのには2つ理由がある。
1つが本書はビジネスパーソンでかつ学者でもある著者によって執筆されているのでプラットフォームに対して本質的で概念的な理解を深められることだ。ビジネスパーソンが書いたプラットフォーム本は単なる個別のプラットフォームの事例紹介に終始してしまっているものも多い。そんな中で本書は学者だからこその業だ、成功したプラットフォームに共通している原理を浮き彫りにしている稀有な一冊である。

そしてもう1つがプラットフォームを賛美するのではなくプラットフォームを運営する上での難しさ、失敗パターンについて詳しく紹介している点も好感が持てる。

発刊は2016年と少し古めではあるもののプラットフォームの原理を捉えているがゆえに本書の有効期限は少なくともこの先十数年は持つはずだ。出版されては消費され一瞬で店頭から消えていく出版業界において稀に見る良書である。

 

最新プラットフォーム戦略 マッチメイカー著者略歴

デヴィッド・S・エヴァンス|DAVID S. EVANS
経済学者、ビジネスアドヴァイザー、起業家。独禁法関連の経済専門知識を提供するグローバルエコノミクスグループと、マルチサイドプラットフォーム戦略に関する助言を行うマーケットプラットフォームダイナミクスというふたつのコンサルティング会社に共同出資し、リードしてきた。また、ユニヴァーシティカレッジロンドンでは独占禁止法と経済学で客員教授などを務めている。これまで10冊の本を執筆、共著、編集。シカゴ大学で、経済学の学士、修士、博士号を取得している。

 

リチャード・シュマレンジー|RICHARD SCHMALENSEE
マサチューセッツ工科大学the Howard W. Johnson Professor of Management and Economicsの名誉教授で、MITスローン経営学大学院で9年間学部長を務めた。以前には大統領評議会の経済アドヴァイザーのメンバーを務めたこともあり、産業組織の経済学と、政府の政策と経営戦略への適用分野において世界の主要な学者のひとり。12冊と130以上の学術論文を執筆・共著している。MITで経済学を専攻し、博士号を取得している。

 

 

>>「最新プラットフォーム戦略 マッチメイカー詳細

 

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今、儲かっているビジネスはプラットフォームビジネス

画像引用元:STARTUP DB

画像引用元:STARTUP DB

儲かるビジネスは大きく様変わりした。時価総額ランキングを見ると平成元年はNTTが首位。銀行や電力会社など日本のインフラ系企業がトップ10入りしている。

一方、平成31年現在はどうか。アップル、マイクロソフト、アマゾン、アルファベット(グーグル)、アリババ、テンセント、フェイスブックなどIT企業がトップ10入りしている。そして、これら7社はすべてプラットフォームビジネスなのだ。

言うまでもなくプラットフォーム型ビジネスは現在、無茶苦茶儲かる旬のビジネスである。今後この趨勢は十数年は継続するだろう。

であるからこそ本書「最新プラットフォーム戦略 マッチメイカー』でプラットフォームの原理について理解を深めるのはかなり有意義なのだ。

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プラットフォームとは何なのか?

ビジネス界隈ではよくプラットフォーム、プラットフォームと連呼されている。ただその割にプラットフォームの定義が明確でない。そう感じている人も多いだろう。

プラットフォームの例として宅配アプリのUberEatsを挙げよう。

UberEatsは顧客、レストラン・店舗、宅配員と3つのユーザーを集めた場(プラットフォーム)を作っている。UberEatsはレストラン・店舗から得る手数料によって収益をあげている。しかし、単純にユーザーを集めるのがプラットフォームの本質ではない。

本書においてはプラットフォームの本質を2つ以上の異なる集団の”出会い”を促進することにあると定義する。つまりプラットフォームの本質は異なる属性のユーザーをマッチングすることなのだ。そしてプラットフォームをマッチメイカー(マッチングを作るもの)であると定義する。

UberEatsというプラットフォームの本質は顧客、レストラン・店舗、宅配員と3つのユーザーをバランスよくマッチングすることなのだ。たとえば顧客だけ増えてもUberEatsで注文できるレストラン・店舗が少なければ「良いお店が見つからない宅配アプリだ」と顧客離れを招く。顧客が少なければレストラン・店舗としてもUberEatsに掲載するメリットが薄い。宅配員としても宅配業務が少なければUberEatsで仕事するメリットが薄い。であるから異なる属性のユーザー同士をバランスよくマッチングすることが重要なのだ。

繰り返しとなるがプラットフォームでは異なる種類のユーザーをバランスよく増やしてそれぞれにメリットがある形でマッチングさせることが求められる。

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ITによってマッチングを”ターボ化”

マッチングビジネス自体は全く新しいものではない。

たとえば結婚の仲介をする仲人などはマッチングビジネスの良い例だ。結婚したい男と結婚したい女という異なる属性の人をマッチングして紹介料を得ている。

しかし異なるのは現代のマッチングは6つのITによって地理的制約・時間的制約が除去され大量かつ迅速に実行されるようになった点が従来のマッチングビジネスと異なる

➀強力なチップ、CPUパワー(しかもスマホにそれらが掲載され万人の手にそれらが行き渡った)
②インターネット

③ワールドワイドウェブ
④ブロードバンド環境
⑤プログラミング言語とOS
⑥クラウド

本書では上記6つのITによってマッチングがとてつもなく加速拡大している様をマッチメイカーのターボ化と表現している。1つのマッチングから得られる手数料は微々たるものであるものの大量かつ高速にマッチングを行い手数料を搔き集め莫大な利益を生み出している。だからこそGAFAをはじめプラットフォームビジネスを手掛けるIT企業の時価総額はとんでもないものとなっているのだ。

Uberであればスマホを持ったユーザーとスマホを持ったUber運転手とを高速かつ効率的にマッチング。従来の伝統的タクシーを一気に駆逐している。

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プラットフォームビジネスは簡単ではない。むしろ難易度高い

本書が好感を持てるのは「プラットフォームってスゲーんだぜ。儲かるぜ」と煽ることに終始していない点だ。むしろプラットフォーム型ビジネスは難易度が高く超えるべきハードルは高いと言っている点だ。

著者はプラットフォームビジネスを手掛ける起業家が嵌ってしまいがちな過ちは「つくれば人が来る」という考えにあると指摘する。プラットフォームに人が集まってくるのは重要なフリクションがある場合のみだと。

このフリクション(friction)とはつまり異なるユーザー間の交流を邪魔する摩擦=障壁のことだ。フリクションが大きく、そのフリクションを取り除き異なるユーザーをマッチングする役割をプラットフォームが果たせるのであればそのプラットフォームには人が集まり繁栄する。

フリクションを取り除いて成功したプラットフォームの例としてはYouTubeがわかりやすい。

なぜYouTubeは成功したのか?

2000年代中盤、インターネットが普及し多くの人は潜在的に動画を他の人にシェアしたいと考えていた。しかし誰もが簡単に動画をシェアできるツールがないというフリクションがあった。YouTubeはこのフリクション(障壁)を取り除くことで成功を収めた。

しかしYouTubeがそのフリクションを特定し取り除くまでの道のりは険しかった。
2005年にYouTubeに初めて動画が投稿された。しかしそれはYouTube創業者のカリム氏が動物園の前で撮影したものだった。
動画がなければ視聴者も集まらない。視聴者が集まらなければ動画を投稿する人も集まらない。そのためYouTubeは自前で動画を用意せざるをえなかった。カリム氏と創業者仲間らは友人・知人らに動画のアップロードを頼んで回ったりクレイグリストに10個の動画アップロードにつき100ドルの報酬を支払うという案件を掲載した。

カリム氏らはさらに動画の視聴体験を強化するためにコメント機能を追加したり、関連動画を探しやすくした。SNSに張り付けたり個人ブログにYouTubeを張り付けられる機能も強化。動画をシェアしやすい仕組みを作り動画を投稿したくなるようにしたのだ。

このような地道な機能のアップデートによって徐々に動画を投稿するユーザーが増え始めた。そして動画を投稿する人だけでなく動画を視聴する人も増えた。

2005年8月の動画投稿数が1日数本だったのに対して2006年5月には3万本になり視聴数も爆発的に増加した。YouTubeはクリティカルマス(商品・サービスが爆発的に普及し始める分岐点)を突破した。

視聴者はYouTubeに十分な数の面白い動画があると思うからこそYouTubeを訪れる。投稿者もYouTubeに動画を投稿するとたくさんの人に視聴してもらえると感じているからこそ動画を投稿する。さらにたくさん視聴者がいるYouTubeに広告を載せたいと考える企業も出てくる。すると収益につながる。

クリティカルマスに到達できるかいなかはプラットフォームにとっては超重要だ。このクリティカルマスに到達できずに閉鎖したプラットフォームは数多い。

著者曰く2年以内にクリティカルマスに到達できないプラットフォームは失敗に終わるという。
「あのサービスはダメだ使い物にならない」という悪い評判が出回って誰もそのプラットフォームを利用しなくなるからだ。一方でYouTubeのようにクリティカルマスに到達していれば「あのサービスは使える」と良い評判が出回って人が集まってくる。

 

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これからのビジネスパーソンにとって必須の書

今儲かっているビジネスの多くがプラットフォームビジネスだ。だからといってプラットフォームビジネスに飛びつくと屍の山の一員になりかねない。プラットフォームは簡単な部類のビジネスではなく極めて難易度が高いものなのだ。

本書にはプラットフォームビジネスの難しさ、そして障害を克服するためのヒントがギッシリ詰まっている。何もFacebookやAmazon、メルカリなどのように大きなプラットフォームではなくともオンラインサロンのようなビジネスもプラットフォームだ。プラットフォームを運営する上で本書は極めて有用な一冊となるだろう。一読をおススメする。

 

 







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